2010年1月7日木曜日

4分の5拍子

若かりし頃, 冬の数ヶ月だけ老舗のJazz喫茶でウエイトレスをしたことがある.
1階は普通の喫茶室だが2階は劇場仕立てになっていて, 一人客は大概2階へと上がっていった.
吹き抜けの壁の高い位置に巨大スピーカーが設置されおり, 2階の全席はスピーカーの方を向いて座るよう置かれていた.
レコードはいつも真っ白なタオルで水拭きしてから針を落とし, 紐をしゅるしゅると引いてレコードジャケットを2階の空間へと上げる. 左右のスピーカーの間の, スポットライトが当たる場所にそれは納まる仕組みだ.

アルバイトを始めて間もなく, 週に2~3回夕方の決まった時間に来て同じ曲をリクエストする客に気がついた.
グレーの作業服を着た40歳前後の男性で, スッと2階へ上がると一番前の席に座りコーヒーを注文する. 1曲だけ聴いて帰って行くのだ.
店はいつも空いていたから, その客が来ると仕事をする振りをしながら私も2階で聴くようになり, すっかりその曲の虜になってしまった.

超有名な, DAVE BRUBECK の "Take Five"

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