2008年9月24日水曜日

脱出

小学3年の秋, 自転車の練習をするのに貰ってきたのは大人用の重い実用車だった. ハンドル, ホイールなど全てをペンキで真っ赤に塗ってくれたが, いつまでもべたつくので爪を立て三日月に跡をつけるのが癖になった.
郵便屋さんみたいだと自慢気に乗っていたけれど, ペダルにやっと足がとどく大きさだったから停止する度に飛び降りるか倒れるしかなく, アザが絶えない足をしていた.
公道を走る時は命がけだったことを母と年下の恋人は知らないと思うが, 一人でどこへでも出かけて行った.
自分が移動した分だけ道が出来ていくことを発見し, 世界を作る秘密を知った気になっていたのだ.



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